
みなさんは介護の仕事にどんなイメージを持っていますか?
大変そう、重労働、低賃金など…。ニュースでも施設での虐待の事件が報道されたり…。
あまりいいイメージを持っていない方も多いのではないでしょうか?
でも、そんなことないですよー!
私の妻は介護の仕事をして7~8年になリますが、いつも「楽しい」と言っています。待遇面や労働環境でも満足しています。
どんな業界でもそうですが、いい職場もあれば、悪い職場もあります。マイナスイメージはニュースになりますが、いいところはなかなかわかりにくいものです。
このコラムでは、介護ヘルパーさんと利用者さんとの心温まるふたつのエピソードをご紹介します。介護の仕事への転職・就職を考えている方に「介護の仕事って楽しそう」って思ってもらえたら幸いです。
1.老眼鏡どこにいった?

最近は若い介護職員の方も多いですが、主力はまだまだ子育てを終えて介護職についた世代です。グループホームで働いているA子さんも老眼鏡が手放せません。仕事中もいつも老眼鏡をかけたり、外したり。
ある日、いつものように老眼鏡を食堂のテーブルの上に置いて、違う部屋の利用者さんのお世話をしていました。食堂に戻ると、置いてあったはずの老眼鏡がありません。「あれ?」「どこ?」「どこにいった?」「私のメガネ知らない?」などと、あたふた探しています。テーブルの周りに座っていた利用者さん達も「どこにいったんだろうね〜」などと言いながら一緒に探してくれています。
可愛らしいおばあちゃん
そんな時、ふと一人の利用者さんを見ると、A子さんの老眼鏡をかけているのではないですか!A子さんも驚いたというより、思わず笑ってしまいました。A子さん」が、「○○さ〜ん、そのメガネ、わ・た・し・の」「返してねー」と言うと、○○さんは「ほうけ」と言って返してくれて一件落着。
ちなみに○○さんは今まで、メガネをかけたことはありません。
また△△さんは、なんでも自分のものだと思ってカバンにしまう癖があります。他日、またA子さんがテーブルの上に置いた老眼鏡が△△さんのカバンから出てきました。
ちなみに△△さんも今まで、メガネをかけたことはありません。
もちろん○○さんも△△さんも、悪意はありません。今では、老眼鏡がなくなってもすぐに見つかります。
憎めないというか、なんとも可愛らしいおばあちゃんたちです。
2.杖を振りまわすおばあちゃん

スーパーの駐車場で杖を振り回すおばあちゃん。その側で笑顔でやさいしい言葉でなだめているヘルパーさん。忍耐強くおっばちゃんの気が収まるのを待ち続ける姿を見て、介護のプロフェッショナルだなぁって感心した話。
あるスーパーの入り口から親子連れがタクシー乗り場に向かって歩いてきます。でも何か様子が変です。
あっちに行ったりこっちに来たりふらふらとしながらタクシーに近づいていきます。
何か言いあいをしてるようにも見えます。タクシーのドアが開きました。あわてて娘さんが「すいません。乗りませんので。」と言います。ドアが閉まります。
すかさずおばあちゃんが「何言ってるのよ、タクシー乗るの!」と言ってタクシーから離れようとしません。娘さんが「今日は乗らないからね。歩いておうちに帰りましょうね。」と言っています。
介護のプロフェッショナル
そうです、娘さんに見えたのはヘルパーさんでした。ヘルパーさんが体を支えながらタクシーから離れさせようとしますが、杖を振り回しながら乱暴な言葉をヘルパーさんに浴びせています。
それでもヘルパーさんは、笑顔で穏やかな口調でなだめています。傍目に見ても、おばあちゃんは認知症なのがわかりました。
やっとのことで、ヘルパーさんはおばあちゃんを連れてその場を離れることができました。その間10分ぐらい、相変わらずおばあちゃんは杖を振り回し怒鳴っていましたが、ヘルパーさんは優しく丁寧に語りかけ、おばあちゃんの気が変わるのを待っていました。
以前、元看護師で今は介護施設の管理者の方に聞いた話を思い出しました。その方はニュースでも取り上げられた施設での虐待の事件を持ち出して、経験がないと我慢ができないと言われていました。
若い子は資格を持っていたりして知識はあるけれど、経験が足りない。介護でいちばん重要なのは我慢すること。利用者さんから乱暴な言葉を投げかけられたら、人間だから頭にくるのは当たり前。
言うことを聞いてくれなかったり、意地悪な方、ときには乱暴な行為をはたらく方もいます。そんな時に冷静に受けて流す術は、年齢を重ねて経験を積むことでしか学ぶ事ができません。教えたくても教えれるものではないと言っていました。
そんなことを思い出しながら、さきほどの30台後半に見えるヘルパーさんは、まさしくプロフェショナルだなぁって感心しました。
気配りも介護のうち
杖といえばもう一つ困ったことがありました。デイサービスでは、本来施設内の杖の使用は禁止しています。理由はトイレに忘れてきたり、テーブルに立てかけたまま忘れてきたりして、その杖につまずいて転ぶ方がいて危ないからです。
しかしほとんどの利用者の家族の方から、「足腰が弱っているから施設の中でも杖を持たせてくださいね。」と頼まれます。理由を説明しても、ウチだけはお願いしますと言って押し切られるのがオチ…。
けっきょく、自分たちで杖を使わなくてもいいように利用者さんをサポートしたり、壁やテーブルに立てかけてある杖を常に見逃さないように気を配っています。
使わせないようにするのではなく、施設内で安全に過ごせるように気配りをするのもプロの仕事…ですね!