介護職員初任者研修と実務者研修(介護福祉士実務者研修)はどちらも無資格・介護実務未経験で取得ができる資格です。
介護の資格を取りたいけど「どちらの資格を最初にとったらいいのだろう?」
と迷っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、それぞれの資格のメリット・デメリットなどの特徴を比較して、自分にあった資格はどちらなのか検討していただけるようにまとめてみました。
介護職員初任者研修と実務者研修(介護福祉士実務者研修)の違いを比較
どちらが上位資格になるの?
介護職員初任者研修< 実務者研修(介護福祉士実務者研修)
実務者研修修了者は、都道府県の判断により介護職員初任者研修の全科目を免除することができます。
(厚生労働省:介護職員初任者研修における経過措置より)
介護職員初任者研修の目的
介護職員初任者研修は、今後訪問介護事業に従事しようとする者、若しくは在宅・施設を問わず最低限の知識・技術とそれらを適用する際の考え方のプロセスとして身につけ、職場の上司の指示を受けながら基本的な介護業務を実践できることを目的として行われるものです。
実務者研修(介護福祉士実務者研修)の目的
介護職員の質の向上とキャリアアップの仕組みが法律改正により整備され、幅広い利用者に対する基本的な介護提供能力の修得を目的として「実務者研修」が創設されました。
平成28年度(第29回)の介護福祉士国家試験の受験資格から、実務経験(3年以上介護等の業務に従事)に加え、「実務者研修」の修了が必要になりました。
介護職員初任者研修修了・実務者研修修了で、できること・できないこと
介護職員初任者研修、実務者研修共に介護職未経験の方の受講が可能です。
介護職員初任者研修修了、実務者研修修了では、できること・できないことに下記の違いがあります。
介護職員初任者研修 | 実務者研修 | |
---|---|---|
訪問介護 | ||
サービス提供責任者 | ||
医療的ケアの学習 | ||
介護福祉士の受験資格 |
訪問介護・・・訪問介護員(ホームヘルパー)として従事するには、介護職員初任者研修以上の資格を保有している必要があります。
サービス提供責任者・・・2018年度までの資格要件に含まれていた介護初任者研修及び旧ヘルパー2級の修了者が2019年度から完全廃止されました。2019年度以降は実務者研修以上の資格が必要です。
医療的ケアの学習・・・実務者研修修了者が現場で医療的ケアを実施するには、認定特定行為業務従事者になる為の実地研修が必要となります。
介護福祉士の受験資格・・・実務者研修修了と実務経験3年以上が受験資格になります。(実務経験ルート)
キャリアパスから考える
厚生労働省のキャリアパスの基本は「初任者研修修了者 → 実務者研修修了 → 介護福祉士 → 認定介護福祉士」となっています。
まずは初任者研修を取得して介護の仕事に慣れ、キャリアアップを目指しステップアップすることができるように仕組み作りがされています。
カリキュラム(研修内容)の違い
実務者研修の合計受講時間数は450時間(無資格で取得する場合)、介護職員初任者研修の合計受講時間数は130時間です。
実務者研修を修了するには、役3.5倍もの時間がかかります。カリキュラムは実務者研修の科目数が20科目に対し、介護職員初任者研修の科目数は10科目と2分の1になっています。
どちらの研修もスクーリング(通学授業)が義務付けられていていますが、実務者研修の方が短くなっています。
介護職員初任者研修を取得してから実務者研修を取得する場合は、初任者研修受講分130時間が免除されて実務者研修の研修時間は320時間に短縮されます。
資格名 | 合計受講時間数 | スクーリング(通学)日数 |
---|---|---|
介護職員初任者研修 | 130時間 | 90〜95時間(全日制で約15日〜16日) |
介護福祉士実務者研修(無資格) | 450時間+16時間(医療的ケア演習) | 61時間(全日制で約9日〜10日) |
介護職員初任者研修
- 職務の理解 6時間
- 介護における尊厳の保持・自立支援 9時間
- 介護の基本 6時間(スクーリング)
- 介護・福祉サービスの理解と医療との連携 9時間
- 介護におけるコミュニケーション技術 6時間
- 老化の理解 6時間
- 認知症の理解 6時間
- 障害の理解 3時間
- こころとからだのしくみと生活支援技術 75時間(スクーリング)
- 振り返り 4時間(スクーリング)
実務者研修
- 人間の尊厳と自立 5時間
- 社会の理解I 5時間
- 社会の理解II 30時間
- 介護の基本I 10時間
- 介護の基本II 20時間
- コミュニケーション技術 20時間
- 生活支援技術I 20時間
- 生活支援技術II 30時間
- 介護過程I 20時間
- 介護過程II 25時間
- 介護過程III 45時間(スクーリング)
- 発達と老化の理解I 10時間
- 発達と老化の理解II 20時間
- 認知症の理解I 10時間
- 認知症の理解II 20時間
- 障害の理解I 10時間
- 障害の理解II 20時間
- こころとからだのしくみI 20時間
- こころとからだのしくみII 60時間
- 医療的ケア 50時間
「医療的ケア」には50時間とは別に16時間の演習を修了する必要があります。
スクーリング(通学)での受講が必須の時間数
どちらの研修も、通信で受講できる科目以外にスクーリング(通学)での受講が必須の科目があります。
学習範囲は初任者研修に比べ実務者研修は二倍になっていますが、スクーリング(通学)が必須な科目は初任者研修の方が多く、実務者研修の方が少なくなっています。
このことからも初任者研修は介護の入門時資格、実務者研修は介護職経験がある程度ある経験者向けであるといえます。
また、実務者研修は、介護士として働きながらでも研修を受講できるように、通信の受講を多くしてスクーリング(通学)の受講を少なくなるように配慮されています。
取得にかかる費用と受講期間の違い
介護職員初任者研修は介護職の入門資格のため、実務者研修に比べ研修期間も短く、取得費用も安く設定されています。
資格名 | 取得費用 | 受講期間 |
---|---|---|
介護職員初任者研修 | 6万円~ | 1〜4ヵ月 |
介護福祉士実務者研修 | 13万円~ | 6ヵ月 |
※各受講施設によって設定値段に幅があります。ここでは平均的な目安費用になります。
サービス提供責任者になるための資格要件の違い
サービス提供責任者(サ責)は、人員配置基準に基づいて事業所から適任者として任命されてなることができる職種です。
初任者研修修了者・実務者研修修了者ともに、サービス提供責任者として仕事ができますが、サービス提供責任者になるための要件が異なります。
初任者研修修了者・・・3年以上の実務経験を持ってサービス提供責任者になることができるが、減算の対象となる。
実務者研修修了者・・・実務経験を要せずサービス提供責任者になることができ、減算もない。
初任者研修修了者は3年以上の実務経験があれば資格要件を満たしていますが、減算対象となるため、なることができないと考えるのが現実的です。
実務者研修修了者は実務経験がなくてもなることができます。
ただし、サービス提供責任者は経験に加えて実務能力も必要な職種なので、介護福祉士が任命される傾向があります。
2019/4/1追記
今までの資格要件に含まれていた介護初任者研修及び旧ヘルパー2級の修了者が2019年度から完全廃止されました。
介護福祉士を目指す場合は?
将来的に介護福祉士を目指す場合は、「実務者研修」の修了が受験資格となっています。
介護職員初任者研修のみを修了している方は、あらためて実務者研修を受講する必要があります。ただし、その場合の研修時間は130時間が免除されて320時間となります。
初任者研修修了者が介護福祉士になるには→ 実務経験3年以上+実務者研修(320時間)修了+介護福祉士国家試験(筆記)合格
実務者研修修了者が介護福祉士になるには→ 実務経験3年以上+介護福祉士国家試験(筆記)合格
難易度で比較する
実務者研修は介護職員初任者研修の上位資格になるので、学ぶ範囲も広くなり医療的ケアなども学びます。
介護職員初任者研修の全科目が免除になり、介護職員としての経験を積んだ方を前提とした研修なので難易度も高くなります。
介護実務未経験の方が実務者研修を最初に受講する場合は、自宅学習の範囲が多い通信コースより通学コースを選んだ方がいいでしょう。
介護職員初任者研修のメリット
- 基礎的な介護の知識・技術を学ぶことができる。
- 介護職員初任者研修を取得すると待遇面のアップが期待できる。(事業所によって異なります。)
- 訪問介護員としての仕事ができる。
実務者研修のメリット
- 介護福祉士国家試験の受験資格となる。
- サービス提供責任者の資格要件になる。
- 「たん吸引」や「経管栄養」など、医療的ケアの基礎知識を学ぶので、仕事の幅が広がります。
- 実務者研修を取得すると待遇面のアップが期待できる。(事業所によって異なります。)
介護職員初任者研修と実務者研修、おすすめなのはどちら?
介護職員初任者研修はこんな方におすすめ
介護職で働きたいけど、どんなことをやるのか分からない、続けることができるか不安な方
研修では介護の基礎の知識や技術・考え方を学ぶことができるので、就職前に仕事について理解することができます。
未経験で働きはじめたけど、知識や経験がないので仕事に対して疑問や不安がある方
先輩職員は、通常業務で忙しくて新人職員に手取り足取り教えている時間がない方がほとんど。
忙しい姿を見ていると、わからないことや疑問に思ったことがあってもなかなか聞くことができないので、常に不安を抱えながら仕事を続けている方も多いようです。
介護職員初任者研修は仕事をしながら短期間で学ぶことができるので、自信を持って仕事に取り組むことができるようになります。
再就職・転職の為に資格が必要な方
最近の求人では、応募資格に資格保有が必須になってきています。
将来的なキャリアアップは望んでなくて、就職のためにとりあえずはやく資格を取る必要がある方。
実務者研修はこんな方におすすめ
将来的に、介護福祉士を目指している方
介護福祉士国家試験の受験資格に必須です。
実務経験3年の間に取得できるように計画的に受講すれば、最短で介護福祉士国家試験を受験できます。
医療的ケアを学んで仕事の幅を広げたい方
医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)ができるので、職場の中でより必要とされる人材になります。
無資格で長く介護士として働いていて経験が豊富な方
初任者研修では、もうすでにわかっていることを学習することになるので、時間や費用がかかってもより待遇面やキャリアアップが期待できる実務者研修を修了したほうがいいと思います。
まとめ
どちらを先に取得したほうがいいかは、仕事への取り組み方、資格取得後の将来の働き方、キャリアップの希望などをどう考えているかによって変わってきます。また、現在の職場環境の中で資格取得までにかけられる時間や費用も考慮する必要があります。
介護の仕事に初めて就職する方は、厚生労働省のキャリアパスにもある通り、最初は介護職員初任者研修を取り、介護の仕事を長く続けれそうならば実務者研修、介護福祉士とステップアップして行くのがいいと思います。
介護職未経験で初任者研修を飛ばしていきなり実務者研修を受けられた方もいますが、研修途中で挫折するケースも多いようです。実務者研修は経験をある程度積んだ方の研修と位置付けられているため、全くの初心者では理解に時間がかかる科目もあります。
挫折せずに最後まで修了できるかどうかは、その人自身によるものなのでなんとも言えませんが、まずは介護職がどんなものか知ってからステップアップを考えてもいいかもしれませんね。