平成23年より導入が検討されていた介護福祉士の新たなキャリアパスの仕組み「認定介護福祉士」の養成研修がいよいよ本格的にスタート。平成28年12月24日に全国初の養成研修が長野県介護福祉士会の主催で始まりました。
ここでは、認定介護福祉士とはどんな役割、なるために必要な研修は、活躍できる職場などについてご紹介します。
認定介護福祉士とは?
「認定介護福祉士」とは、より高い専門性を持ち、現場をマネジメントできる資質も備えた介護福祉士の上級資格です。
介護福祉士の資格取得後も、継続的な教育機会を提供して資質の向上を図り、社会的要請に応えていくことを目的にした、介護福祉士の新たなキャリアアップのための仕組みです。
※「介護職員初任者研修⇒実務者研修⇒介護福祉士⇒認定介護福祉士」が現在(2017)のキャリアパスです。
※2016年12月24日に全国で初めて「認定介護福祉士養成研修」が長野県介護福祉士会の主催でスタートしました。
認定介護福祉士に求められる役割
専門職としての質の高い介護実践
利用者の生活環境に合わせた最善の個別ケアの提供、質の高い心理的ケアや終末期ケアの実践、リハビリの知識を踏まえた介護の計画・提供ができるスキルが必要です。
チームマネジメント・サービスマネジメント・サービス評価等に必要な知識、チームのサービス展開や介護実践の指導方法を学び、チームリーダーなどに対する指導を行います。
リーダーとしての指導・教育
医師や看護師、ケアマネジャーなどの他職種からの情報や助言を適切に理解して、介護職チーム内で共有できるようにします。
また、「どうしてその場面でその介護を行うのか」という理由をきちんとチーム内に説明し、チーム内に対する教育指導、介護サービスマネジメント、適切な役割分担をしてサービスの向上につなげられるようにする現場の中心的な役割も担います。
他職種との連携・協働
利用者の状態や変化、それを踏まえて実践しているサービスの詳しい内容を、医師や看護師、リハビリ職などの他職種に正しく論理的に説明し、共有することで介護サービスに反映することができます。
他職種と連携・協働することで、地域包括ケアの推進を図り主導的な役割を担います。
地域における介護力向上
地域における、ボランティア、家族介護者、介護福祉士等の相談に乗って適切にアドバイスするなど、地域と関わりながら支援します。
介護における地域ニーズを把握・分析して施設・事業所の介護力を地域の人々のために活用します。
認定介護福祉士が導入された背景
超高齢者社会を迎え、介護サービスの多様化、複雑化、高度化に対する社会的な要請に応えていくためには、よりレベルの高い介護職が必要になりました。
一言で介護福祉士といっても、レベルにばらつきがあるのが現状です。
良いサービスを効率的に提供できる介護チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)をつくるには、教育指導、介護職を束ねるマネジメントができるリーダーとなる人材の育成が大きな課題となっていました。
専門的な知識と技術、多角的な視点を持ち、現場をまとめて引っ張っていける質の高いリーダーを育成する目的で認定介護福祉士が導入されました。
認定介護福祉士を認定する機関
平成27年12月1日に「認定介護福祉士」の養成を目的とした社団法人「認定介護福祉士認証・認定機構」が設立されました。
養成研修を実施する研修実施団体を認証し、その研修を修了した人を「認定介護福祉士」として認定する機関です。
全国で初めて機構の認証した認定介護福祉士養成研修が、公益社団法人長野県介護福祉士会にて平成28年12月24日より始まりました。今後は他県でも研修実施団体の認証が進む見通しです。
研修の目的
居住・施設系サービスを問わず多様な利用者・生活環境、サービス提供形態等に対応して、より質の高い介護実践や介護サービスマネジメント、介護と医療の連携強化、地域包括ケア等に対応するための考え方や知識、技術等を習得し現場の介護チームのリーダーに指導できる職員の養成を目的とします。
認定介護福祉士養成研修の内容
認定介護福祉士養成研修は、「認定介護福祉士養成研修Ⅰ類」と「認定介護福祉士養成研修Ⅱ類」で構成されます。
研修の科目は生活支援を軸に医療やリハビリテーションとの連携の在り方を学ぶものや、マネジメントに関係するものが中心になります。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
- 介護福祉士養成課程では学ばない新たな知識(医療、リハビリ、福祉用具と住環境、認知症、心理・社会的支援等)の修得
- 他職種との連携・協働を含めた認定介護福祉士としての十分な介護実践力の完成
- 利用者の尊厳の保持や自立支援等における考え方にたった介護過程の展開を、介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダーに対して指導するために必要な知識の修得
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
- 根拠に基づく自立に向けた介護実践の指導をする力を獲得
- 認定介護福祉士に必要な指導力や判断力、考える力、根拠をつくりだす力、創意工夫する力等の基本的知識に基づいた応用力を養成
- サービス管理に必要なツールを整理、改善し、それらから根拠を導きだし、その根拠に基づいた指導をする力を獲得
- 生活支援の視点から、地域の介護力を高める力を獲得
- 利用者を中心とした地域づくり(地域マネジメント)に展開できる力を獲得
カリキュラム
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
領域名 | 科目名 | 単位 | 受講時間(課題学習を可とする時間) |
---|---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 1 | 15(7) |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 2 | 30(30) |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 2 | 30(15) | |
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 2 | 10(10) |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20(8) | ||
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 2 | 30(8) | |
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 2 | 30(0) |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 2 | 30(15) |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 2 | 30(15) |
地域生活の継続と家族支援 | 2 | 30(15) | |
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 2 | 30(0) |
個別介護計画作成と記録の演習 | 2 | 30(0) | |
自職場事例を用いた演習 | 1 | 30(20) | |
合計 | 22 | 345(143) |
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
領域名 | 科目名 | 単位 | 受講時間(課題学習を可とする時間) |
---|---|---|---|
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ | 2 | 30(15) |
心理・社会的支援の領域 | 地域に対するプログラムの企画 | 2 | 30(15) |
マネジメントに関する領域 | 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 1 | 15(7) |
チームマネジメント | 2 | 30(15) | |
介護業務の標準化と質の管理 | 2 | 30(15) | |
法令理解と組織運営 | 1 | 15(7) | |
介護分野の人材育成と学習支援 | 1 | 15(7) | |
自立に向けた介護実践の指導領域 | 応用的生活支援の展開と指導 | 2 | 60(40) |
地域における介護実践の展開 | 2 | 30(0) | |
合計 | 15 | 255(121) |
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類と認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の合計は600時間になります。
受講対象者
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
- 介護福祉士資格取得後の実務経験が5年以上
- ファーストステップ研修修了、または、現任研修100時間以上の受講などによる内省や学習習慣を獲得した者
- 介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダー (ユニットリーダー、サービス提供責任者等)としての実務経験を実務経験を有することが望ましい。
- 居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
- 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了
- 介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダー (ユニットリーダー、サービス提供責任者等)としての実務経験を有すること
- 居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
研修時間
最初のⅠ類が345時間、次のステップのⅡ類が255時間の合計600時間。
教室での講義だけではなく、それぞれの職場で実際に取り組んでもらう演習なども含まれます。
※長野県の場合は平成28年12月24日(土)~平成30年9月まで全41日間(合計600時間)で開催されます。
認定されるには
認定介護福祉士養成研修の全過程を修了後、 (社)認定介護福祉士認証・認定機構に認定申請することが必要です。
機構による審査の後、 「認定介護福祉士認定証」が発行されます。 5年ごとに認定更新申請があります。
受講料は
受講料は主催者により異なります。
長野県介護福祉士会の認定介護福祉士の養成研修受講料
- 同会会員 348,500 円
- 非会員 594,500 円
長野県では研修受講料を負担する職場に対して、経費の一部(1人14,000円)を補助する制度があります。
認定介護福祉士として活躍する職場
認定介護福祉士の研修では、教育・指導志向や、管理志向をもつ介護士を養成を目的としています。
事業所や施設の介護サービスマネージャーとして…
どのような利用者に対しても最善の個別ケアを提供することを目的に、介護職によるサービス提供チームのユニットリーダーやサービス提供責任者などのリーダーに対する教育、指導、介護サービスマネジメントを行い、サービスの質を向上させます。
管理志向としては、サービス管理者、事業所の管理者などになります。
教育・指導志向としての教育者として…
地域の介護に関わる多様な人材(ボランティア、家族介護者など)への助言や指導。地域の介護福祉士との交流会などでの教育、指導。地域の学校、自治会などへの介護講座、授業の講師など。
地域包括ケアの中心的役割として…
行政や他職種と連携・協働で地域包括ケアを推進する立場。地域包括センターでの介護相談など。医療ニーズの高い利用者の主治医や訪問看護師、リハビリ職との連携が重要です。